『External Signal Processor』
日下 芝・烏山秀直・ムカイヤマ達也
エキスターナルシグナルプロセッサー(外部信号加工回路)という聞き慣れない言葉はシンセサイザーの1パートの名称で、マイクやギターなどの外部より入力される信号(音)をシンセサイザーに取り込み加工するものである。シンセサイザーは本来、内蔵される発振器によって発音されるのに対し、これは外からの音を加工するのである。
絵を描くなどの美術の作品制作にこれを置き換えてみると、この発振器は作家の内部にある衝動、欲望、ビジョン、世界観などであろう。これまで一般的にこの発振器にあたる
作家自身の衝動が重要であり、作品とはそのような結果であると捉えられて来た。
ところがこのところ、この内蔵発振器を外部に求め、その加工、交換、編集のプロセスのあり方を重視しようと試みる作家たちに出会う。
日下芝は極限的に単純な構成要素を厳格な計算によって配置し、それによって豊か「間」を生み出す。それでいてその形象はぼんやりと曖昧で私たちをいつまでも焦点の定まらない茫漠とした海へと投げ出す。
烏山秀直はまるで刺繍か布の装飾パターンをデザインするかのように緻密な配列を機械的に組み立てていく。しかもそれは半透明の絹に痕跡たっぷりに描かれ、単純な眼の愉悦を裏切りあくまで絵画であることを主張する。
ムカイヤマ達也は身の回りのモノを並べて舞台のマケットのようなセットをつくり、それを情感たっぷりに描く。虚構をさらに虚構化し、絵の中には虚構の表皮だけであることを強調するかのように厚塗りの絵の具の量感やナイフのタッチを見せる。
三人に共通するのは、制作の出発点を作家自身の内実から遠く離れたところに置きながら、それでいてなお絵画を描くという点に強く収束してくるところにある。そんな絵画の新しさと変わらなさを感じさせる新世代の作品展である。
Art Labo 深川いっぷくディレクター 白濱 雅也
会期:2013年11月20日(水)~12月7日(土)
時間:12:00~19:00(月・火休)
〒135-0021 東京都江東区白河3-2-15 1F
TEL 03-3641-3477
E-Mail fukagawaippuku@gmail.com